テラス沼田 (沼田市役所)TERRACE NUMATA (Numata City Hall)
市の中心部にあって長らく空き家状態にあった築25年の商業施設を、市役所を中心とした複合施設へと再生したプロジェクトである。
閉鎖空間の積み重ねであった既存建物を、採光や通風の取れる快適な空間に変えること、また、今後、市が施設を維持していく上での負担を減らすよう、大胆に減築を行った。
防災庁舎として災害時の拠点ともなることから、建物をほぼスケルトン状態にまで解体した上で、ブレースの追加や基礎補強などの耐震補強を行うことで建物の重要度係数を1.5に引き上げている。
市役所のメインフロアとなる3階には、施設中央に最上階まで吹抜けのアトリウムを設け、施設内に立体的な関係性を生み出した。各フロア1辺60m以上に及ぶ四角い形状の施設であるが、このアトリウム面に開口を設けることで、建物中央付近の部屋であっても、光や風を感じることができている。
また、既存建物の階高が、近年のオフィス空間としては決して十分とは言えないことから、執務スペースの天井はルーバー天井とすることで、実際の天井高以上の気積を感じられることを意図した。
なお、外壁の位置を内側に下げることで、各所にテラスを設けているが、これらのテラスは、内外を繋ぐ中間領域として機能するだけでなく、非空調空間であることでランニングコストの削減に大きく寄与している。軒天に用いた木製ルーバーには、市内産杉材を採用した。
中心市街地にテナントが撤退した巨大施設を抱えた地方自治体は多いが、ここまで手をいれて再生したところは少ない。今後も増えるであろう「普通の建物」を使い続けるための手法の一つとして、今回のプロジェクトは大きな可能性を持っていると考えている。
受賞歴:
第30回 BELCA賞 (ベストリフォーム部門)
2020年度 日本建築防災協会理事長賞・耐震改修優秀建築賞
第53回 SDA賞 金賞
掲載誌:
建築ジャーナル|2019年6月号
日経アーキテクチュア|2019年6月27日号
新建築|2020年3月号
増改築の法規入門 増補改訂版|日経アーキテクチュア+ビューローベリタスジャパン著
ディテールの教科書 防水・水仕舞い編|日経アーキテクチュア編集
ディテール No.227|2021年冬季号
photo by Akira Hosaka (1,2)