都市での生活を離れ，ゆっくりとした時間を楽しむための週末住宅である。敷地は河口湖畔に古くからある集落を登っていった里山の風景の中にある。山裾の森とアンズ畑に三方を囲まれ南面する傾斜地からは、河口湖越しに雄大な富士山の姿を望む。この得がたい環境を前に、滞在時にはこの風景と共に過ごしながら、季節や天候の加減によって、あるいは室内での過ごし方の違いによって、また不在時の用心のためにも「開き加減」を自由に調整できる仕組みをもった小屋をつくりたいと思った。内部のどこからでも風景を楽しめるように、敷地斜面のできるだけ上方に傾斜と直行して高さを抑えた細長い建物を配置した。木造のボックスをRC造の下部構造に載せたこの建物は、視線の抜けを妨げる耐震要素が居住スペースに現れないように、妻側で水平力を負担する構造計画とている。平面計画は非常に単純で、すべての室に南側の風景を取り込むことを原則として1階に個室と水回り、2階に居間を取り、寒冷地の斜面故に深くなる基礎の有効利用として地下の一部を掘り下げて貯蔵庫としている。ここでの暮らしの中心となる2階居間の眼前には、グランドレベルとはまた違った素晴しい風景が広がっている。このスペースを視線の通りが良い一室空間とするために、収納や設備機器などは両妻のくし型耐力壁に組み込み、屋根構面をディメンションランバーと構造用合板で構成している。またキッチンや階段との間仕切りがわりに。薪ストーブを組み込んだ大きなキッチンカウンターがこのスペースを分割している。季節の良い時期には、テラスに面した折りたたみ窓と木製ルーバーをすべて開放すれば、どこにいても樹上住居のような開放感を楽しむことができる。一方、1階では河口湖から背後の森へと続く斜面との連続感を強く意識した。