NSPビルNSP Building
この建物は、上部にオーナーのための住宅をもつオフィスビルである。敷地は南側を高層ビル、北側を住宅地に挟まれた用途境界に位置する。南面の採光が全く期待できないため、計画当初より、垂直方向の空間配置により下層まで自然光を取り込むことと、視覚的に連続する開放感を獲得することがテーマとなった。
建物全体は、吹き抜けによる二層を単位としたオフィスと住宅を積み上げた構成となっている。非常に厳しい日影規制を逆手に取り、セットバックした部分にテラスやトップライトを設けた。また、南側および北側には移動とサービスのための空間を配置し、居室部分を周囲から切り離している。
地下一階から一階にわたるオフィスは、二層吹抜けの一室空間である。トップライトやドライエリアから自然光を導き、コンクリート打ち放しの壁やモルタル直押えの床を内部まで引き込むことによって、地下でありながら外部へ連続した開放感のある空間を目指した。その上にある二、三階のオフィスは、外部への連続と共に、吹抜けやガラススクリーンによって視覚的に連続させることを意図している。四階から上の住居部分については、二世帯居住を含めて、生活様式の変化にフレキシブルに対応できるように計画した。五階には来客や将来の子世帯のためのエントランスを別に設けている他、住宅としては大きなスケールの吹抜けは、隣接する部屋の使い方に応じて様々な利用の仕方が可能である。
また、この建物では、仕上げに素材の質感と存在感を求め、打ち放しの壁面に対して、枕木やモルタル、無垢材フローリング、絨毯、ゴムチップタイルなどを組み合わせている。開口部に関しても、外壁のほとんどが延焼ラインにかかるという条件下で空間の連続性を実現するために、小断面でありながらしっかりとした存在感を持つスティールサッシュを採用した。ここでは、表面処理性能試験を行い、耐候性試験を繰り返した上で、規格化・標準化を前提とした熱押出形鋼によるサッシュを新規開発している。
受賞歴;
日本建築学会作品選奨
JCDデザイン賞'99優秀賞
第33回SDA賞優秀賞・地区デザイン賞
掲載誌:
新建築|1998年3月号
JIA Award for Annual Architectural Design Commendation
JCD Award'99 : Second Award
33th Sign Design Association Award : Second Award
photo by Toshiharu Kitajima